ざっくりパプアニューギニア

虫好きと旅好きをこじらせた、ざっくりしたOLのざっくりしたひとり旅日記。パプアニューギニアへは2006,2007,2009,2014年の計4回訪問。

PNG#05『アンジ村のマリ』

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村の前では、ベットナットが私が迎えてくれた。ベットナットは私のニューギニ
アの父である。いつ到着するか分からない私を、家族と交代しながら朝から待っ
ていてくれたようだ。

「Mari-」というベットナットの叫び声を合図に、村の奥から見慣れた村人達が
続々と出てきて私を迎えてくれた。残念ながら夜の闇に彼らの顔はすっかり溶け
込んでおり、誰がいるのかはっきり見分けることができなかったが、「ナンバ 
マリ ナンバ ネナイム ワナック(この村の娘 マリだよ)」と私がしゃべる
と、「アイー」「アイー」と村人から歓喜の声があがり、道路は一瞬で村人に埋め尽くされた。

 

そこに、そっと私の手をとる小さな手があった。ジョセリンだ!


ジョセリンは私の友達の1人である。

初めてこの村を訪問した時、小さな子供達は私を見て、驚き泣き叫んでいた。

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【↑泣き叫ぶ子供】


大人たちですら、白人でも黒人でもない、大人なのか子供なのかわからない奇妙
な生き物の訪問に戸惑っていた程である。

私が歩くと大名行列のように、後からみんなぞろぞろついてくる。
止まって振り返ると、みんなも止まってニコニコしたり、目をそらしたりしている。

気にはなるが、近づくのはちょっと怖い、そんな感じだった。


そんな行動を面白がり、私は一度振り向きざまに「わっ!」と言ってみんなを驚かせたことがある。
大半が驚きつつも、笑いながら散り散りに逃げて行ったが、1人の女の子が泣き
出してしまったのだ。

あせった私は、謝ろうと彼女に近づこうとしたが、近づけば近づくほど彼女の顔は恐怖で引きつり、泣き声も大きくなっていった。

 

暫く考えて、私は距離を保ちつつ、近くにある植物のツルを使い、簡単なマジッ
クを披露した。マジックは、初めての土地に行く時心をつかむため必ずやるネタであるが、それが功を奏し、少女は一気に心を開いてくれた。

その少女こそがジョセリンなのだ。

 

それからの彼女は別人のように私にべったりになり、私の手をとり、彼女が通う小学校や村のまわりを案内しくれた。彼女のお陰で、私は村の子供達に受け入れられたといっても過言ではないだろう。

 

その彼女が私のために、一張羅を着て私を待っていてくれたのである。
村人はいつもボロボロの服を着ている。
汚れていたりサイズがあっていなかったりは当たり前で、大半の子供達の服は破れている。一張羅を着るのは教会に行く時と何か特別なことがあるときだけだ。

 

彼女のドレスはちょっと大きいらしく、最初はずれ落ちる肩紐を一生懸命あげて
いたが、最後の方はそれすら止めて、肩紐がずれ落ちたままニコニコと私をじっと見つめていた。その目には一点の曇りももない。初めて会ったときと同じ目だ。

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【↑右下がジョセリン】

 

私に群がる村人を押しのけるように、暗く足場の悪い道を、ジョセリンは私の手を引いてゆっくり歩いてくれた。

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【↑家のゲート】

 

村の入り口から、私の家までは一直線に25mほど歩いたところにある。
見覚えのあるゲートをくぐると、家の前に1人の女性がたっていた。
誰よりも会いたかったリンである。リンはPNGの私のお母さん。リンは私に駆け
寄り、強く強く抱きしめてくれた。

やはり母という存在はどこにいっても特別だ!
私は涙を止めることができなかった。